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ファイル共有ソフトで前科者になった

shareで漫画をアップして摘発され前科者になったので、体験したことを書いてく

ファイル共有ソフトで前科者になった -その23- 〈検事調べ-1〉

俺の反省具合や被害者への謝罪や社会的罰について検事から聞かれるかと思い、出版社及び作者への謝罪及び被害賠償申出の手紙のコピー、会社への非違行為報告書のコピーを準備する。
午前中まで仕事だったのでワイシャツにスラックスの格好のまま行く。(カジュアルな私服よりこのほうが印象が良いのではないか、という思惑もある)

約束10分前に検察支部に着。
受付に声をかけ中に入ると、4つの取調室が並び、それぞれに主任検事名が書かれている。
ここの支部、こんなに検事がいたのか。ちいさな街だから支部長と部下の2名くらいかと思ってた。

もし逮捕されてたら、留置所から手錠をされたまま護送バスで連れられてきて、自分の順番になるまで固い木の椅子で身動きも話もできず半日座って待たないといけなかったわけで、逮捕されなかった有りがたさをかみしめる。

指定された部屋にノックして入ると、正面に検事、横に検察事務官
検事のラフな見た目にびっくり。30代前半くらいの年齢で、肌は浅黒く髪はウェーブがかかったロンゲで、確かポロシャツにチノパンを履いてて、横浜あたりのビーチでサーフボードを持ってても違和感がない。想像してた検事像と全く違っててほんと驚いた。
もちろん表情には出さない。
検察事務官はもっと若くて20代後半から30代前半くらいで、こちらはきっちり髪を整えてネクタイを締めて生真面目そう。

「お手数かけております。よろしくお願いします。」と挨拶して着席し、本人確認をされたあと検事からの質問に答える形で進んでいく。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その22- 〈検察の求刑・懲役か罰金か〉

検察からの検事調べの呼び出しハガキが入っていないか、仕事から帰るとポストを毎日確認する。
1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月・・・来ない。
イムリミットのある逮捕勾留してる事件(身柄事件)が優先で、俺のような在宅事件は後回しになるとわかっているが、やきもきする。
このまま検事が忘れて7年経って公訴時効になってくれたら嬉しいが、そんなわけ無い。

11月中旬、弁護士に電話して
「送致から起訴まで、在宅事件だと半年くらいは普通ですかね?1年くらい待ったほうがいいですか。」と聞いてみる。
「さすがにそんなにはかからないですよ。こちらから検事に問い合わせてみます。」と弁護士。

翌日、弁護士が検事に進捗状況を問い合わせると、検事から略式処分で罰金刑を考えていると伝えられたと、電話が来た。
懲役執行猶予で一発解雇になることはなくなった!
ああ、よかった・・・
摘発された直後は悩んで悩んで、「解雇で退職金がなくなるより、こっちから辞表を出して自己都合でやめたほうがいいかも」と退職金額まで計算してたが、先走らなくてよかった。

翌々日に検察事務官から、検事が取調べするので地方検察庁支部に来るよう電話が来た。(急だな)
2日後の午後2時に約束。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その21- 〈会社へ報告〉

弁護士と打合せするため弁護士事務所に行く。
弁護士が検事と面会したとき、俺が会社からの懲戒処分を受けたか検事が気にしていたとのこと。
弁護士の見解としては、社内処分を受けていれば「既に社会的罰を受けている」ということで検事が起訴猶予とする可能性もあるかもしれないとのことだった。

これまで「会社に知られずに済むならそれにこしたことはない」と思っていたが、社内処分を受けてでも不起訴になったほうが良いと判断し、弁護士と相談のうえ会社に報告することにした。

会社に報告した内容を検察官に提出したほうが良いので、書面で「非違行為報告書」を作った。
テンプレートは無いので日付と相手(部長名)と反した法律名、犯した行為の概要、反省しており二度としない旨を書いた。
どういう反応をされるか、気が重い。

夕方になりあらかた課員が帰ったあと、直属の上司(係長)に「すいません、話があります。非違行為の報告です。課長と一緒に部長にご報告します。」と切り出す。
驚いた顔の係長と一緒に課長に話し、係長課長と一緒に部長室に入った。
応接テーブルに座る3人に「大変ご迷惑おかけしてしまうことになりますが、非違行為を行い警察から家宅捜索を受けました。」と報告書を配る。
3人が目を通す。口頭で内容を説明する。
3人ともファイル共有ソフトがどういうものかわからないようで、詳しく説明した。

「自ら報告してくれてありがとう。まずそれが嬉しい。」と部長。
「これがどのくらい悪質な行為なのかよくわからないが、違法行為に違いないから人事課には報告しないといけない。なんらかの処分は避けられないだろう。でも飲酒運転で人を傷つけたとか会社の金を横領したとかではないので、解雇まではされないのではないかな。」
とのことだった。
予想外に厳しくない反応だったのでホッとした。

数日後、課長から「人事課に報告したが、前例がないので、刑事処分がわからないと会社としても処分が決められない。刑事処分が確定したら再度報告してほしい。」とのことだった。
何か処分してくれれば不起訴になる期待もあったが、そういう方針なら仕方ない。
弁護士には非違行為報告書のコピーを渡し、会社に報告した事実といずれ処分が出る見込みだと検事に伝えてほしいと頼んだ。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その20- 〈送検〉

8月中旬
検察に送致(書類送検)したという電話が、刑事と弁護士のそれぞれから来た。
刑事からは刑事処分が決まったら内容を教えてほしいと頼まれた。
弁護士からは、担当検事に会いに行って被疑者の反省を伝え、懲役執行猶予となれば解雇され社会的罰として厳しすぎるので、社会生活を送りながら更正するためにも解雇されないよう、不起訴かせめて罰金刑にしてくれと頼む、とのことだった。

だが、証拠がはっきり固まってるので嫌疑不十分はありえず、起訴猶予となるのも難しいだろうな。同種事件では罰金刑や懲役執行猶予になってる内容なので。
せめて罰金刑になってくれればいいが、求刑は検察官のみが決められる特権事項なので、俺にも弁護士にもどうにもならない。

検察官が懲役を求刑したら裁判所が罰金の判決を出すことはほぼ無いようだ。(ネットで検索した限り交通違反で1例あっただけ。)
よほど世間を騒がせる事件でない限り、多くの裁判官は検察官からの求刑の8割掛け(執行猶予なら求刑通りの懲役+執行猶予1.5倍)の判決を機械的に出すと「相場」が決まってて、被告人家族・友人の「嘆願」や本人の反省度合いはほとんど意味が無いようだ。

唯一大きく影響するのは被害者への被害弁償と示談成立で、 特に示談内容に被害者からの「重い処分を求めない」の表明があれば確実に減刑となるが、毎年2月に定期的に行っているファイル共有ユーザー全国一斉取締りは「被害額を取り戻す」金銭目的でなく、ユーザーを減らすための一罰百戒の目的が大きいだろうから、示談に応じてもらえる可能性はほぼゼロだろう。(弁護士もそう言っていた)
そもそも示談に応じてもらえるのなら、起訴前に告訴を取り下げてもらえれば(著作権法違反は親告罪なので)検察は100%不起訴にする。
でもそうなったら検察は余罪部分で立件するよう警察に補充捜査を命じるかもしれず、数百冊を共有していた俺としてはキリがない。(一冊あたり10万円で示談するとして総額は数千万円となり俺には支払不能、逆に出版社は一冊10万円なんてはした金で示談に応じる気はないだろうし。)
示談による告訴取下げ・求刑の軽減はあきらめて、刑事罰については運を天にまかせることにする。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その19- 〈警察での取調べ5回目以降〉

その後2回の呼び出し取調べがあった。
これまでの青色天使3冊に加え、余罪として別のマンガ2冊が追加され計5冊になった。
「余罪がたくさんあるけど、全部捜査するのは物理的に不可能なので、これだけ追加する」と刑事。

HDDを解析した結果に基づいて内容を詳しく聞かれた。
HDDの解析結果やこれまでの捜査内容が、厚み3cmほどの分厚いファイルになっていた。
大変な事件を起こしてしまったんだ、刑事さん達に大きな手間をかけさせてしまっている、と改めて実感する。

しかし聞かれても何月何日にshareを起動してどのファイルを共有フォルダに追加したかなんて覚えてないので、
「細かく覚えてないのですが、警察で解析した結果を見るとファイルのタイムスタンプが○月○日○時○分となっているので、そのときにファイルをダウンロードして共有フォルダにいれ、アップロード可能な状態にしたと思います」という形での供述調書となった。

ファイルの日付を見て自分の記憶もそうなってると答えるのではなく、
自分は覚えて無いけどファイルの日付がそうなってるからそうなのだろう、という正直な内容で記載してもらった。
あいまいな内容を覚えてると言ってしまうと、後から矛盾点が出たらいい加減に話していると思われてしまうから。(事実関係で争ってる事件ではないから、あまり意味はないと思うけど・・・)

動機について聞かれ、「より多くのマンガを読みたいと思い、アップロードもしたほうがダウンロードしやすくなるという情報を見たので、
ダウンロードしたファイルをそのままアップロードフォルダに入れました。」と正直に答えた。
(事件報道では「落すばかりでは悪いから、自分も他人に提供しようと思った」という動機をよく見るけど、どっちが悪質と見られるんだろう?)


5月ごろ、妻も一緒に来るようにとのことで、二人で警察署に。
俺はいつもの取調室で県警本部の二人の刑事から取調べ。妻は生活安全課の片隅にある相談室で所轄の刑事から事情聴取。
妻は被疑者ではないので相談室なんだろう。
妻自身がそういう事をしていたか、夫がこういう事をしていたのを知っていたかと聞かれ、もちろんしておらず知らないのでそう答えたそうだ。
あとは妻の身上調書も作ったらしい。
妻の調書はその日に出来上がらず、後日に一人で警察署に行って調書に指印を押してきてた。手間かけさせてすまんのう。

俺の取調べはその日で終わり、刑事から「これで取調べは最後です。あとは検察に書類を送って検察の判断になります。」と言われた。
県警本部から××警察署まで毎回出張で、私のしでかした事で手間かけさせてしまいすいませんでしたと言うと、いえいえ・・・とのことだった。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その18- 〈刑事罰と会社の処分〉

それからしばらく警察からの連絡がなく、帰宅後に毎日ネットで情報収集する日々が続く。
ファイル共有ソフト関係では判決が「罰金30万円」「罰金50万円」「懲役2年、執行猶予3年」となっている複数の事例があり、ネットには事件の概要しかなく、何でこの差がついてるのかわからない。
犯人の更生見込みの違いか、立件されてない余罪部分の情状かと思う。
俺は更生については(本人としてもちろん)確実にファイル共有からは足を洗って更生するつもりだが、余罪が多くて情状が非常に悪いので微妙なところだ。

懲役求刑となれば確実に執行猶予付きの懲役判決となる(懲役求刑で罰金判決は年に一桁しかない)。
そうなれば会社は100%解雇されるわけで、「どうせクビになるなら今がんばっても・・・」と仕事に熱が入らない状態が続く。

会社の就業規則を初めてじっくり読んだが、違法行為で摘発されたときの報告義務は書かれて無い。
報告しなくてもそれを理由に重くなることはないはずだ。

報告したらどういう処分になるか。
発覚前に自ら報告すれば、処分を軽減するとある。
私的生活で違法行為をした場合、刑法の主な罪名ごとに処分内容が細かく書かれているが、著作権侵害は書かれていない。
似たところで器物損壊だと厳重注意~減給、窃盗だと出勤停止(自宅待機)~解雇で、そのどちらと見なされるかで大きく違う。
器物損壊に近いと見てくれればいいんだが・・・

ファイル共有ソフトで前科者になった -その17- 〈警察での取調べ4回目〉

翌日の同じ時間、××警察署に。すっかり見慣れた建物だ。
部屋の封印を剥がして入室。クローン作成は無事完了していた。
もうHDDが壊れて証拠品が失われる妄想にひたれなくなった。

若手刑事と技術捜査員がオリジナルのHDDをパソコンに戻し、箱をシールと指印で封印して写真を撮られる。
次回はクローンHDDの解析がある程度進んだら電話するとのこと。

スマホは返してほしいよね?」と聞かれ、もちろんと答えると
解析が終わったようで返してもらえることになった。
中にあったヒマつぶしに読む用のマンガ単行本のzipファイルは、刑事の目の前ですべて削除して写真を撮られた。

若手刑事は以前に「素直に応じれば逮捕しない」と言ってたものの、俺は「いつ逮捕されてもおかしくない立場」と思ってて、逮捕への恐怖におびえる日々だったので、
いっそ自分から逮捕してくれと頼んで、不安から逃れたいという気すらしてくる。

捜査のためのHDDコピーにこれだけ時間がかかるとなると、もし俺が家宅捜索時に否認・抵抗して逮捕されてたらどうなってたんだろう。
逮捕後は最長23日間しか拘束できないタイムリミットがあるが、クローンHDDを調達して解析するには間に合わないよな。

今のとこ青色天使3冊で告発されているが、余罪(共有してたマンガファイル)がたくさんあるから、警察から権利者に情報提供して告発してもらって再逮捕すればいいだけか。
やろうと思えば逮捕状の対象を小分けにして何十回(いや、共有フォルダには数百冊入ってるから数百回)でも再逮捕できるから、捜査が完了するまで長期勾留になるだけだろうな。
やっぱり逮捕されなくてよかった。