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ファイル共有ソフトで前科者になった

shareで漫画をアップして摘発され前科者になったので、体験したことを書いてく

ファイル共有ソフトで前科者になった -その25- 〈押収品返還、弁護士報酬〉

検事取調べの翌日、××警察署の刑事から電話がきた。
押収品を返還するので受取りに来てほしいとのこと。なるべく妻も一緒に来るようにと。
夕方6時に約束。

仕事から帰って妻と一緒に車で警察署に。
生活安全課の相談室で待っていると、刑事が大きな段ボール箱をかかえてやってきた。
蓋には「堀内幸雄 3月○日」と書かれたシールと指印。そうか、あれからもう8ヶ月も経ったか。あっという間だったな。

封印を解除して中にあるパソコンを確認。
刑事がもってきた白紙に「本日11月○日に還付を受けたパソコンについて、中にある違法なファイルは全て消去します。 堀内幸雄」と書いて押印。その下に妻が立会人として記名押印。
スマホ還付のときは刑事の目の前でマンガファイルを全て消去して消去後の写真まで撮ってたのに、送致しちゃうと扱いが変わるんだな。

家に持ち帰ったパソコンは、しばらく手をつけるのも嫌で部屋の片隅に放置していたが、中身をそのままにしておくわけにはいかんとケーブルを接続して起動し、(10ヶ月ぶりにshareのショートカットアイコンを見た瞬間に吐き気が襲ったぜ)shareのプログラムや落したファイルを全部消した。

検事調べの3日後、弁護士事務所から報酬分の請求書が届いた。まだ判決文が来てないのに気が早い。
成功報酬額は契約にて、懲役実刑ならゼロ・執行猶予付き懲役なら30万・罰金刑なら60万・不起訴なら90万としていた。
略式罰金となったので60万円の請求があり、ATMで振り込んだ。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その24- 〈検事調べ-2〉

検「警察での調書を読みましたが、そこで述べた内容の通りですか?」
俺「はい。」
検「shareのログ写真を見ると直近のIP取得が家宅捜索の3日前になってるけど、その日からの稼働で間違いない?」
俺「(そういえばそこは警察では聞かれなかったな)もう半年以上前なのでよく覚えていませんが、ログがそうなっているならそれで間違いないと思います。」

と3問くらいの質問を終えると、検事が
「私が警察で話した内容に間違いはありません。最後にshareを起動したのはよく覚えていませんが、ログ画面によれば2月○日の○時○分・・・。反省しており二度としません。」と口述して、それを横にいる事務官がすごい勢いでタイピングする。
検事が話し終えると同時に検面調書がプリントアウトされ、検事が読みながら示した文面を確認すると誤字脱字は一つもなく、調書はきちんと文章になっていて、検事の口頭で文面を作る能力と、検察事務官の超速タイピング能力に感心した。

内容に相違ないので署名し印鑑を押す。
そう、警察では証拠物の封印から調書まですべて黒インクで指印を押していたが、検察では朱肉で印鑑を押すよう言われたのだった。

検「堀内さんは初犯で、素直に罪を認めており、取調べでの態度も真面目でしたが、処分無しというわけにはいかず、罰金刑を考えています。弁護士さんから聞いてるかと思いますが、堀内さんに異議がなければ略式手続きを考えています。略式処分についてはご存じですか?」
俺「はい、知っています。略式でお願いします。」
検「念のため説明します・・・・以上、異議がなければ略式手続きに同意する旨、こちらの書面に署名押印してください。」
略式請書に署名押印する。
検「これで検察での取調べは終わりです。お疲れ様でした。」
俺「失礼します。」

半日かかるだろうと午後いっぱい有給休暇を取っていたが、30分で終わった。
用意していた謝罪文や職場への申告書のコピーは全く求められることはなく、淡々と流れ作業的に終わった。

検察庁から外に出てから「あ、そういえば求刑額を聞くの忘れた」「押収品(パソコン)の返却をお願いするの忘れた」と気づいたが、戻って聞くわけにもいかんし仕方ない、待とう。

まだ不安があって、検察内部の決裁で罰金求刑がハネられ正式起訴されるとか、裁判所が略式は不適切だと判断して正式公判にするよう差し戻すとか(滅多にないらしいけど)・・・
の可能性もあって完全には安心できないが、とりあえず一区切りついた。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その23- 〈検事調べ-1〉

俺の反省具合や被害者への謝罪や社会的罰について検事から聞かれるかと思い、出版社及び作者への謝罪及び被害賠償申出の手紙のコピー、会社への非違行為報告書のコピーを準備する。
午前中まで仕事だったのでワイシャツにスラックスの格好のまま行く。(カジュアルな私服よりこのほうが印象が良いのではないか、という思惑もある)

約束10分前に検察支部に着。
受付に声をかけ中に入ると、4つの取調室が並び、それぞれに主任検事名が書かれている。
ここの支部、こんなに検事がいたのか。ちいさな街だから支部長と部下の2名くらいかと思ってた。

もし逮捕されてたら、留置所から手錠をされたまま護送バスで連れられてきて、自分の順番になるまで固い木の椅子で身動きも話もできず半日座って待たないといけなかったわけで、逮捕されなかった有りがたさをかみしめる。

指定された部屋にノックして入ると、正面に検事、横に検察事務官
検事のラフな見た目にびっくり。30代前半くらいの年齢で、肌は浅黒く髪はウェーブがかかったロンゲで、確かポロシャツにチノパンを履いてて、横浜あたりのビーチでサーフボードを持ってても違和感がない。想像してた検事像と全く違っててほんと驚いた。
もちろん表情には出さない。
検察事務官はもっと若くて20代後半から30代前半くらいで、こちらはきっちり髪を整えてネクタイを締めて生真面目そう。

「お手数かけております。よろしくお願いします。」と挨拶して着席し、本人確認をされたあと検事からの質問に答える形で進んでいく。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その22- 〈検察の求刑・懲役か罰金か〉

検察からの検事調べの呼び出しハガキが入っていないか、仕事から帰るとポストを毎日確認する。
1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月・・・来ない。
イムリミットのある逮捕勾留してる事件(身柄事件)が優先で、俺のような在宅事件は後回しになるとわかっているが、やきもきする。
このまま検事が忘れて7年経って公訴時効になってくれたら嬉しいが、そんなわけ無い。

11月中旬、弁護士に電話して
「送致から起訴まで、在宅事件だと半年くらいは普通ですかね?1年くらい待ったほうがいいですか。」と聞いてみる。
「さすがにそんなにはかからないですよ。こちらから検事に問い合わせてみます。」と弁護士。

翌日、弁護士が検事に進捗状況を問い合わせると、検事から略式処分で罰金刑を考えていると伝えられたと、電話が来た。
懲役執行猶予で一発解雇になることはなくなった!
ああ、よかった・・・
摘発された直後は悩んで悩んで、「解雇で退職金がなくなるより、こっちから辞表を出して自己都合でやめたほうがいいかも」と退職金額まで計算してたが、先走らなくてよかった。

翌々日に検察事務官から、検事が取調べするので地方検察庁支部に来るよう電話が来た。(急だな)
2日後の午後2時に約束。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その21- 〈会社へ報告〉

弁護士と打合せするため弁護士事務所に行く。
弁護士が検事と面会したとき、俺が会社からの懲戒処分を受けたか検事が気にしていたとのこと。
弁護士の見解としては、社内処分を受けていれば「既に社会的罰を受けている」ということで検事が起訴猶予とする可能性もあるかもしれないとのことだった。

これまで「会社に知られずに済むならそれにこしたことはない」と思っていたが、社内処分を受けてでも不起訴になったほうが良いと判断し、弁護士と相談のうえ会社に報告することにした。

会社に報告した内容を検察官に提出したほうが良いので、書面で「非違行為報告書」を作った。
テンプレートは無いので日付と相手(部長名)と反した法律名、犯した行為の概要、反省しており二度としない旨を書いた。
どういう反応をされるか、気が重い。

夕方になりあらかた課員が帰ったあと、直属の上司(係長)に「すいません、話があります。非違行為の報告です。課長と一緒に部長にご報告します。」と切り出す。
驚いた顔の係長と一緒に課長に話し、係長課長と一緒に部長室に入った。
応接テーブルに座る3人に「大変ご迷惑おかけしてしまうことになりますが、非違行為を行い警察から家宅捜索を受けました。」と報告書を配る。
3人が目を通す。口頭で内容を説明する。
3人ともファイル共有ソフトがどういうものかわからないようで、詳しく説明した。

「自ら報告してくれてありがとう。まずそれが嬉しい。」と部長。
「これがどのくらい悪質な行為なのかよくわからないが、違法行為に違いないから人事課には報告しないといけない。なんらかの処分は避けられないだろう。でも飲酒運転で人を傷つけたとか会社の金を横領したとかではないので、解雇まではされないのではないかな。」
とのことだった。
予想外に厳しくない反応だったのでホッとした。

数日後、課長から「人事課に報告したが、前例がないので、刑事処分がわからないと会社としても処分が決められない。刑事処分が確定したら再度報告してほしい。」とのことだった。
何か処分してくれれば不起訴になる期待もあったが、そういう方針なら仕方ない。
弁護士には非違行為報告書のコピーを渡し、会社に報告した事実といずれ処分が出る見込みだと検事に伝えてほしいと頼んだ。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その20- 〈送検〉

8月中旬
検察に送致(書類送検)したという電話が、刑事と弁護士のそれぞれから来た。
刑事からは刑事処分が決まったら内容を教えてほしいと頼まれた。
弁護士からは、担当検事に会いに行って被疑者の反省を伝え、懲役執行猶予となれば解雇され社会的罰として厳しすぎるので、社会生活を送りながら更正するためにも解雇されないよう、不起訴かせめて罰金刑にしてくれと頼む、とのことだった。

だが、証拠がはっきり固まってるので嫌疑不十分はありえず、起訴猶予となるのも難しいだろうな。同種事件では罰金刑や懲役執行猶予になってる内容なので。
せめて罰金刑になってくれればいいが、求刑は検察官のみが決められる特権事項なので、俺にも弁護士にもどうにもならない。

検察官が懲役を求刑したら裁判所が罰金の判決を出すことはほぼ無いようだ。(ネットで検索した限り交通違反で1例あっただけ。)
よほど世間を騒がせる事件でない限り、多くの裁判官は検察官からの求刑の8割掛け(執行猶予なら求刑通りの懲役+執行猶予1.5倍)の判決を機械的に出すと「相場」が決まってて、被告人家族・友人の「嘆願」や本人の反省度合いはほとんど意味が無いようだ。

唯一大きく影響するのは被害者への被害弁償と示談成立で、 特に示談内容に被害者からの「重い処分を求めない」の表明があれば確実に減刑となるが、毎年2月に定期的に行っているファイル共有ユーザー全国一斉取締りは「被害額を取り戻す」金銭目的でなく、ユーザーを減らすための一罰百戒の目的が大きいだろうから、示談に応じてもらえる可能性はほぼゼロだろう。(弁護士もそう言っていた)
そもそも示談に応じてもらえるのなら、起訴前に告訴を取り下げてもらえれば(著作権法違反は親告罪なので)検察は100%不起訴にする。
でもそうなったら検察は余罪部分で立件するよう警察に補充捜査を命じるかもしれず、数百冊を共有していた俺としてはキリがない。(一冊あたり10万円で示談するとして総額は数千万円となり俺には支払不能、逆に出版社は一冊10万円なんてはした金で示談に応じる気はないだろうし。)
示談による告訴取下げ・求刑の軽減はあきらめて、刑事罰については運を天にまかせることにする。

ファイル共有ソフトで前科者になった -その19- 〈警察での取調べ5回目以降〉

その後2回の呼び出し取調べがあった。
これまでの青色天使3冊に加え、余罪として別のマンガ2冊が追加され計5冊になった。
「余罪がたくさんあるけど、全部捜査するのは物理的に不可能なので、これだけ追加する」と刑事。

HDDを解析した結果に基づいて内容を詳しく聞かれた。
HDDの解析結果やこれまでの捜査内容が、厚み3cmほどの分厚いファイルになっていた。
大変な事件を起こしてしまったんだ、刑事さん達に大きな手間をかけさせてしまっている、と改めて実感する。

しかし聞かれても何月何日にshareを起動してどのファイルを共有フォルダに追加したかなんて覚えてないので、
「細かく覚えてないのですが、警察で解析した結果を見るとファイルのタイムスタンプが○月○日○時○分となっているので、そのときにファイルをダウンロードして共有フォルダにいれ、アップロード可能な状態にしたと思います」という形での供述調書となった。

ファイルの日付を見て自分の記憶もそうなってると答えるのではなく、
自分は覚えて無いけどファイルの日付がそうなってるからそうなのだろう、という正直な内容で記載してもらった。
あいまいな内容を覚えてると言ってしまうと、後から矛盾点が出たらいい加減に話していると思われてしまうから。(事実関係で争ってる事件ではないから、あまり意味はないと思うけど・・・)

動機について聞かれ、「より多くのマンガを読みたいと思い、アップロードもしたほうがダウンロードしやすくなるという情報を見たので、
ダウンロードしたファイルをそのままアップロードフォルダに入れました。」と正直に答えた。
(事件報道では「落すばかりでは悪いから、自分も他人に提供しようと思った」という動機をよく見るけど、どっちが悪質と見られるんだろう?)


5月ごろ、妻も一緒に来るようにとのことで、二人で警察署に。
俺はいつもの取調室で県警本部の二人の刑事から取調べ。妻は生活安全課の片隅にある相談室で所轄の刑事から事情聴取。
妻は被疑者ではないので相談室なんだろう。
妻自身がそういう事をしていたか、夫がこういう事をしていたのを知っていたかと聞かれ、もちろんしておらず知らないのでそう答えたそうだ。
あとは妻の身上調書も作ったらしい。
妻の調書はその日に出来上がらず、後日に一人で警察署に行って調書に指印を押してきてた。手間かけさせてすまんのう。

俺の取調べはその日で終わり、刑事から「これで取調べは最後です。あとは検察に書類を送って検察の判断になります。」と言われた。
県警本部から××警察署まで毎回出張で、私のしでかした事で手間かけさせてしまいすいませんでしたと言うと、いえいえ・・・とのことだった。